バングラデシュ短期留学研修 体験記

●インタビュー参加者:学生A、学生B、学生C、司会(教員)   (2024年3月5日時点)

●留学の形態:大学(部局)間協定を結んだバングラデシュの養成校Bangadesh Health Professions Instituteとリハビリテーションセンターに、セミフォーマルに留学希望学生を派遣。スケジュールのコーディネートは大学間で枠組み作成を行い,旅費等は学生の自己負担。
●学生の短期留学研修先:Centre for the Rehabilitation of the Paralysed(CRP), Bangladesh Health Professions Institute (Occupational Therapy Department)-Savar, Dhaka
●留学期間: 8日間(2024年22日~29日)(移動日除く)
●留学期間中のスケジュール

Observation Area Remarks
1WILLIAM & MARIE TAYLOR SCHOOL(WMTS) (Inclusive school)
N/A Weekend with BHPI students
Neurology Unit & Stroke Rehabilitation Unit (SRU)
  Hand Therapy Unit
Spinal Cord Injury Unit Observation during day off duty. 
Home Visit 
Paediatric Dept. (OT  Service) 
  8  Mental health Clinic

*前半は、今回司会者を務めた教員が同行しました。後半は学生たちが独自に交渉の上様々な体験を積んできました。

1)海外への興味はいつごろから?
学生A:私は中学生ぐらいからなんとなく海外とか英語とかに興味があって、行きたいなあとは思ってたんですけど、その後、高校・大学でコロナがあって、あと作業療法士になるっていうので、海外に行きたい気持ちからいったん遠ざかってしまいました。でも今回バングラディシュ行きに声をかけてもらって、行ったことで、もうものすごく、それはそれは貴重な体験になりました。海外に行くのも、飛行機に乗るのも、空港に行くのも今回が初めてでした。
司会:Bさんはこの短期留学とは別に12月にカンボジアに文化交流研修にいってらっしゃいます。日本人学生の留学先にはアメリカやカナダ、アジアなら韓国や台湾などが多いかもしれませんが、カンボジアやバングラデッシュに行ってみたいと思われた理由がありますか?
学生B:僕は全然、どこの国に行きたい、というような国の縛りはなくて、たまたま文化交流事業をSNS見つけて、日本人学生の自分の得意な作業(剣道)を生かして交流できると思ったので、応募してみたのが始まりです。
学生C:私もずっと留学とか海外に行ってみたいなっていう気持ちがあって、国は決めてなかったんですけど。今回バングラデシュに行けることになって。私はもともとJICAに興味があるので、いい機会だなあと思っていくことにしました。

2)今回の企画に参加するきっかけ
司会:今回のバングラデシュ短期留学は友達に誘われて参加を決めたのでしょうか?
学生C:今回のバングラデシュの研修に関しては、先生方から情報をいただいて、行くことができました。私が海外やJICAに興味があることを、前に先生に伝えていたので、短期留学の情報がでた時にお伝えくださって。それで行くことができたので、もしなにか留学に興味があるっていう方は、先生にも「興味があります」っていうのをアピールするのはすごくいい方法だと思います。
司会:COVID−19の自粛期間も開けて、大学の公式のプログラムも今年度から再開していますので、ポスターで見つけて申し込むというのもできるかもしれませんけれども、今回は作業療法学科の学生さんだけを対象にしたインフォーマルな企画だったということもあり、先生を通じて実現したという経緯もありますね。

3)留学準備を始めた時期は?
司会:4年生は、地域実習もありますし、卒業研究や国家試験もあって忙しい中過ごしてらしたと思いますが、何ヶ月ぐらい前から準備したりとか、情報を集めたりしたのでしょうか?
学生C:飛行機のチケット取ったのが12月。
学生A:だから多分実際に出発する3〜4ヶ月くらい前(11月頃)には心に決めて準備を始めました。
学生B:カンボジアは12月に発つ企画だったので、準備は8月とか9月頃からでした。

4)出発前に留学に期待していたこと
学生A:私は海外へ行きたいという気持ちもあったんですが、それ以外にも理由が。
国内では、いろんな病院や施設に四年間様々な形で実習に行ってきたので、作業療法のひとつのフィールドとして海外の作業療法も見てみたい、というふうに思っていました。
学生C:私はもう海外に行ける海外の作業療法士を見られるっていうことだけでもう、なんかすごいいい機会だなって思っていました。行ってみたら、期待以上の経験がありました!
司会:Aさんは体験のプレゼンを始めたら数日間夜通ししゃべれるくらいに楽しかったみたいですね(笑)。それはまた後半写真を見せていただきながら、伺いましょう。学生Bさんはいかがですか?
学生B:そうですね。やっぱり作業療法の学生としていくので、普通の旅行では行けないところや体験できないことをたくさん経験できるのではないかと思っていました。実際に行ってみて、本当に満足しています。
司会:たしかに、今回インフォーマルとはいえ大学がアレンジした施設に行くので、観光とは違う切り口でその国を知ることもできましたね。

5)短期留学での英語スピーキングレベルの目安は?
司会:英語での会話は?Cさんは結構頑張ってお話しされていたなと、同行していた時に感じましたけれど、皆さんどんな気持ちでコミュニケーションとりましたか?
学生C:現地に行って最初は全然でしたが、2日目、3日目ぐらいからはだんだん慣れてきて、初日より聞き取れるようになったし、なんだか話せるようにといいますか、自分から話しかけてみようっていうふうに変わりました。話すことに関しては準備を何もしていなかったので(笑)、現地に行ってから頑張りました。
司会:「英語はどれぐらいできたら留学行けますか?」ってよく聞かれると思うんですが、何か目安はありますか?
学生C:英検2級くらいです。
司会:英検より経験を積むことが大事という気もします。みなさん中高大と英語の勉強はしてきてるので話せると思うのですが、しゃべる機会がなかなかないということはありましたね。みなさんの学年はCOVID−19の影響もあったけれど、留学以前に学内ではしゃべる機会ってどうでしたか?
学生A:私はあんまりなかったですね。
学生C:私は大学院の留学生の方としゃべる機会がありました。大学に入学する前に、学内に留学生がいると聞いていたんですが、COVID−19の影響で一人も見かけないなと思っていて。で、四年生になったときに、留学生と交流できるイベントがあるって知らせが来たので、そこで初めてしゃべることができました。そこで仲良くなってその留学生さんと一回ご飯を食べに行きました。
司会:COVID-19の間は、留学生も入国するのが難しかったり、みんなステイホームしていたりして接する機会が少なかったかもしれないですね。今は結構、キャンパスでも会えますので、「ちょっと英語の練習をさせて」って留学生と会話が気軽にできるかもしれないですね。

6)写真と動画で綴る体験
司会:写真や動画で体験をご紹介ください。

ハンドセラピーの道具を作っているお部屋。
トイレットペーパーの芯やペットボトルを利用したセラピーグッズを作っており、ここで雇用も生まれている。
日本の場合、プラスチックの道具が販売されているが、バングラデシュではリハビリ道具も身近なもの、手に入る材料から生み出しているというのが印象的だった。
色の組み合わせなども、利用の仕方によっては認知機能へも働きかけることができるようになっている。日本円でひとつ200円程度とのこと。

この作業療法士さんは、イギリスで職場を定年退職された後に、バングラデシュにボランティアでいらしている方。

国はそれぞれ違うけれど、必要となる作業療法の知識・考え方は世界共通なので、ご自身の経験と知識を生かして働かれていた。

現地の揚げパン(Puri)。

バングラデシュは10時〜10時30分が毎日ティータイム。日替わりで色々なものを安く(30~50円位) 食べられ、この日はこの揚げパンをおかわりした。

現地の大学生とショッピングモールで食べたビリヤニという食事です。300円くらいでした。現地ではこの食事と共にコーラを飲むのが定番だそうです。その現地の学生と一緒に行かなければ知ることがなかっただろう現地の若者文化を知ることができたのも、面白い体験でした。

バングラデシュの人はすごく紅茶をよく飲みます。植民地だった歴史的背景もあり、イギリスの文化に影響を受けている面があるそうです。

インクルーシブスクール。

スタンディングを保持する機器を使って立位で文字を書いている場面。座って字を書いている子もおり、一人ひとりに合った場面・環境設定で学んでいました。

インクルーシブ教育という言葉の意味を肌で感じることができる経験でした。現地の子供たちとコミュニケーションがとれたこともとても印象的で、子供たちはベンガル語が主で英語も通じないので苦労したのですが、その分表情や動きをみながらお互いに長いこと遊びました。

施設内の養成校の学科長宅で夜ご飯をご馳走になった時、手で食事をする
作法がわからなかったのですが、息子さんが食べ方を教えてくれました。

脊髄損傷の治療のためのユニットを見学しました。

手の良い姿勢を保つスプリントを作っている場面を見学しました。

このユニットでは、患者さんとご家族が一緒に入院しているホステルでも作業療法介入が行われており、症状が悪化しないような座位のポジショニングについて指導をしている場面を見学しました。

動画では、患者さんと一緒にバレーボールをした場面をご紹介しました。入院中の潤いの時間、大きな楽しみの時間になっているとおっしゃっていました。スパイクの力がとても強かったです!

下の2枚は患者さんがアクティビティで作成した作品です。

アクセシブルガーデンです。

患者さんがお手入れしています。ガーデンは様々な高さの花壇があり、車椅子の高さで設計された花壇もあり、いろんな方が関われる「アクセシブル」なお庭になっていました。

自宅訪問の同行体験もさせていただきました。この写真は、その際の現地のものです。頭に物を載せて運ぶ文化があるのですが、それによる怪我や病気も多く、日本との違いを感じました。

ご自宅にあるスロープは親戚の方が作っていたり、様々な環境に関わるものを手作りで作っていました。

車で訪問していても、途中で車が通れない道になると、長距離を徒歩で移動しました。伺ったお家は他の病院におり不在でした。

子供のリハビリテーションのためのお部屋も見学しました。
日本とよく似た道具もたくさんありました。
とても整備されていました。

CRPの中のお店ですが、このお店の経営はメンタルヘルスクリニックの患者さんがなさっています。

現地の患者さんたちとも仲良くなって、よくコミュニケーションを取らせていただきました。

7)体験を通して得たものとは

司会:今回訪問させていただいたのは、バングラデシュにあるNGO・NPOが運営している大きなリハビリテーションセンターだったので、いろんな施設がたくさん、いろんなサービスがそのセンターの中にあったかなと思います。今回の経験を通して、新たに得られたものはありますか?学生A:私は、現地の学生とコミュニケーションが取れたり、あと私は子供がすごく好きで、子供たちとコミュニケーションが取れたことです。コミュニケーションというのはなんとなく難しいかな、無理かなと思っていたんですが、本当にできて、すごく楽しくて、それが自信にもつながりました。今回の経験から、海外の作業療法にもすごく興味を持って、JICAは作業療法の分野では結構子供も多かったりするので、行ってみたいなと思うようになりました。
学生C:私が一番印象に残っていることは、現地の作業療法学生さんとの交流です。
現地の学生が、授業で1週間田舎に滞在して患者さんに必要なものを、そこにある材料で作ったんだよっていうのを話してくれました。同世代で、こんなに熱量を持って作業療法のことを話せる人がいるんだっていうことと、必要だなって思ったものを実際作ってしまうクリエイティブな思考とか、それを形にする力っていうのは、なんかバングラデシュの人たちの強みだなって思いました。発展途上国はインフラが整っていないともいわれると思いますが、決してレベルが低いのではない。みんないろんな工夫をしてて。なんかその考え方って作業療法士にとって一番重要だなって感じました。だからバングラデシュの作業療法士さんは、私たちに圧倒的に足りないものを持ってるんだなって思って。その話を聞いたときに、じゃあ自分は日本の何を紹介しよう?って、思いつかなかった。次に彼らに会った時には、自分の国の作業療法、自分のことを話せるように、今後取り組みたいなと思いました。
司会:海外に行くと、自分の国のことを、意外と知らないことが分かったっていう話はよく聞きますよね。そういうこともあるかもしれない。Bさんはどうですか?
学生B:僕はやっぱり現地の方と交流して文化を知ることがすごい大切だなって改めて思いました。滞在期間中、見学だけでなくディナーをご一緒させていただいたり、現地の学生さんと休日に過ごしたり、患者さんとコミュニケーションを取ったりできました。そのことを通して、すごく相手のことや、相手の文化のことを知ることができて、それでセラピーの意味をすごく考えられるようになりました。相手を知るということがすごく大事だと。
司会:日本で患者さんに接する時にも、最初はある意味異文化の人と同じです。その人を知ろうとする姿勢というのは、国内でも一緒かもしれないですね。そのことの重要性に改めて気が付かせてもらえる体験だったと感じています。

8)作業療法士を目指す人へのメッセージ
司会:今後作業療法士を目指している人に一言ありますか?

学生A:すごくいろんな経験をさせてもらって、どんな経験からでも絶対にいろんな学びができるなって今実感しています。自分の人生の中で今が一番若いので、行ってみよう、やってみようという決断をしたら実行してみること、これにより今後の可能性も2倍3倍に広がっていくと思います。それを実感しているので今。ぜひ何にでも、決断したら挑戦してみることをおすすめします。

学科長より
日本では分業が進んでいて、病院は病院でという流れがありますが、一方でバングラデシュの方は生活とのつながった線で支援を進めているということがよくわかりました。どうもありがとうございました。
本学の作業療法学科は、病院はもちろんですが、病院以外にもいろんな一般企業、それから役所や行政機関などでも、大学で学んだ作業療法の知識を生かして働いてもらえる、そういう人材を育成するようにカリキュラムを組んでいるというのが、特徴の一つかと思っております。留学も、そういった学びのための一つの選択肢です。
今回のようなインフォーマルな留学の他にも、短期中期長期の留学制度がいろいろ用意されていますので、ご興味のある方はぜひホームページから情報を収集していただけたらと思います。世界に目を向けた作業療法士になりたいという思いのある人は、本学を選んでいただけるとより良い経験を積む機会を得られると思います。